「昨日」は私を助けてくれるためだって理解したけど、どうもそれが理由ではないように思えるから。
「戦いてぇわけじゃねぇよ。俺はな、あの化け物に勝ちてぇんだよ。今の腑抜けた高広じゃ話になんねぇからな」
「だからさ、その意味がわかんないの。『赤い人』は幽霊なんだから、勝てるはずがないでしょ? それにさ、どうして勝ちたいのかわかんない」
武司が負けず嫌いだって事は知っている。
何かと高広に因縁をつけてはケンカをしてたから。
高広が勝ち越しているから、単純に高広の方が強いと思ってたんだけど。
「自分より強い奴とケンカする時ほど興奮するものはないんだぜ? まあ、女のテメェにゃわかんねえと思うけどな。意地ってやつだ」
高広に負けず劣らずだとは思っていたけど……まさかここまでバカだったとは。
幽霊がダウンすると思ってるのかな?
どうやったら勝ちだと考えてるのだろう。
「今勝たなくてもいいんだよ。相島が『カラダ探し』の『呪い』を解いても、世界が変わるなんて俺は思っちゃいねえからな。その時にあの化け物は俺がぶっ殺す。そのための準備だ」
武司も……世界が変わらなかった時の事を考えている。
と、言うより、最初からそんな事は起こらないと思っているのか。
それなのに、「世界が変わらなかったら皆殺しだ」なんて強がってたんだね。