歌を唄い終わった「赤い人」が唸り声を上げる。
怖い……息を止めてまだ十数秒なのに、もう息が続かない。
早く、早く行くか、武司でも私でもいいから見つけて!
諦めが半分。
こんな追い詰められた状況で、私が助かるはずがない。
もうダメだ、息が続かない。
小さく口を開けて、音を立てないように、ゆっくりと呼吸をする。
気づかれるか、気づかれないかわからない状況で、私の身体が震える。
前回も感じた、死神の鎌が首に当てがわれているかのような錯覚。
「カラダ探し」に慣れた今回も感じるとは思わなかった。
酸素が足りないのに、少しずつしか取り入れられないのは辛い。
苦しくて苦しくて、こんなに辛いならいっそ、深呼吸して「赤い人」に見つかった方が楽なんじゃないかと思えてしまう。
そんな極限状態の中、「赤い人」が大きく動いた。
足音が倉庫の中ほどまで移動して、バンバンと跳び箱を叩き始めたのだ。
武司が見つかったの!?
いや、違う。
いつかのように、遊んでいるだけ?
跳び箱を叩いていた「赤い人」は何をしようとしているのか。
突然聞こえた、ドンッという音。
跳び箱に飛び乗ったのか、私の頭よりも高い位置からその音が聞こえた。