恐怖を感じると背後が気になる。
振り返っても何もない事はわかってる。
念のために振り返ってみても、やっぱり何もなくて、私の思い過ごしだったと思えるけど、安心なんてできない。
「からだをちぎってあかくなる~」
扉一枚隔てた向こう側に、死が待ち構えているのだから。
今のところは気づかれていない。
このまま上手くいけば、やり過ごせるかもしれない。
なんて考えた時だった。
「あしをちぎってもあかくなる~」
歌声が……こちらの方に向けられた。
恐怖と不安、そんな中で歌声に集中して、「赤い人」の動きが手に取るようにわかる。
体育館の中をうろついていた「赤い人」は、ここにいるとわかったのか、それともただの偶然かはわからないけれど、確実にこの倉庫に近づいている。
「あかがつまったそのせなか~」