「相変わらずくせぇな。この臭いは好きになれねぇ」
独特の臭いはあるよね。
汗と革の臭いっていうのかな。
マットとか、跳び箱の一番上なんかはそんな匂いがする。
「音を立てないようにね。『赤い人』の声が聞こえたら、手を止めてやり過ごすよ」
「面倒くせぇな。そんな事するならなんでこんなとこに入ったんだよ」
文句を言いつつも、乱雑に物が置かれた棚を調べ始める武司。
私も頑張らないとと思い、別の棚を調べ始めた。
もしかすると、体育館には来ないかもしれない。
生徒玄関から東棟に入ったけど、そのまま二階に行くかもしれない。
なんて、そんな甘い考え通りに「赤い人」が動いてくれるはずがない。
ごちゃごちゃした棚を、なんとか一段調べた頃、その声が鮮明に聞こえたのだ。
「どうしてどうしてあかくする~」
体育館に……入ってきた。
もう物音を立てられない。
「武司、来たよ」