「ついに『赤い人』が現れるわね。場所次第では、探す場所を変えるわよ」
遥の動きは無駄がなかった。
一階と二階の踊り場まで駆け上がり、どこに現れてもすぐ移動できるように足を肩幅に開いて少し腰を落とす。
『赤い……が、……棟二階に現れ……皆さん気をつけ……い』
その校内放送が流れた瞬間、堂々としていた遥の顔が、驚きの表情に変わったのだ。
「な、何よ……これ。肝心の部分が聞こえないじゃない……」
私が「カラダ探し」をした時にはこんな事はなかった。
遥もそうなのだろう。
だからこそ、予測していなかった事態に驚き、恐怖しているのだという事がわかった。
「遥、大丈夫……あの歌は聞こえてないから、『赤い人』は遠くにいるんだよ」
そう、もしかすると、私達が向かおうとしている工業棟にいるかもしれないのだ。
「赤い人」がどこにいるか、詳しくわからない。
常に移動しているとは言え、場所が特定できないなんて考えてもいなかったから、遥の動揺は痛いほどわかる。
「そ、そうね。工業棟がダメでも、まだ生産棟があるわ。だけど……どうして校内放送がこんな事に……」
私の言葉で、少しだけ落ち着いた遥が、ゆっくりと階段を上り始める。