「い、いいよ森崎さん。僕、行ってみる」


口ではそう言っているけど、本当はすごく怖いのだろう。


手が震えている。


「いい覚悟じゃねぇか。悪いようにはしねぇよ。まあ見てな」


そう言って、ふたりは校舎の中に入っていった。


誰もいなくなった屋上で、私はひとりになってしまった。


ひとりでこうしていると、あの日の事を思い出す。


忘れたくても忘れられない、私が目覚めた日の事を。


外に出る事もできずに、誰にも覚えられていなくて、ここにしかいられなかった。


空はあの時と変わっていないのに、今にも壊れてしまいそうな大きな亀裂があって、世界が崩れ落ちてしまいそう。


「ひとりぼっちか。あの時のひとりは辛かったな」


青い空に手を伸ばして、亀裂を指でなぞってみる。


何か、似たような事をしたような気がする。


……ダメだ、こんな所にいたんじゃ、気が滅入ってしまう。


まさか武司と小川君が出かけるなんて思わなかったから、退屈で仕方ない。