「それは……その……」


苦手意識は、一度生まれてしまうとなかなか克服する事はできないよ。


特に、人に対する苦手意識は。


「武司、無茶だよ。小川君はずっと中島君にいじめられてて、今さらそんな事言ったってさ」


「明日香、テメェは黙ってろ。そうやって甘やかすから、こいつは自分でどうにかしようとしねぇんだよ。俺を守ろうとしたなら、自分の身くらい守れるだろうがよ。いつまでもうじうじしてんじゃねぇよ」


そう言って立ち上がった武司は、小川君に近寄ってにらみつけるように見下ろしたのだ。


それに完全に萎縮して、大きな身体を小さくしていた。


武司も口が悪いから、言いたい事を素直に伝えられないんだろうな。


きっと、もっと自信を持って、いじめに立ち向かえって言いたいんだろう。


「オラ! 立てよデブ!」


……たぶん。


蹴り飛ばされて、無理やり立たされる姿は、どう見てもカツアゲされる生徒だよ。


「明日香、このデブ連れてくぜ。ちょっと街で鍛えてきてやるよ」


「いやいや、何するつもり!? 小川君が嫌がる事をしちゃダメだよ!?」


武司の事だから、ろくな事じゃないに決まってる。