脚の横で、握られた遥の拳が震える。


もしかして、武司と同じように、遥も変化する「昨日」の中で大切なものを失ったの?


「最初の変化でパパが失踪したわ。事業に失敗して、とんでもない額の借金を残して。次の変化では、もう私はここに住んでいた。ママはいつも泣いていたわ。どうしてこうなったんだって、現実を受け入れようとはしなかった。そして……次の変化で私はママに殺された」


秘密にしていた事が、一度話してしまって、堰を切ったように溢れ出した。


母親が、遥を殺した?


そんな事があるのかと思ったけど、現実を受け入れられなかった母親が娘と無理心中……。


ドラマの中のような話が、現実で起こったんだ。


「当然私は『カラダ探し』ができなくて、半年以上美紀の操り人形。早くこの地獄から抜け出したいと思ったけど……誰も、カラダを探そうとしてくれなかった。嫌だったけど、ママを殺してなんとか再開した『カラダ探し』で、偶然見つけたカラダを納めて、私は死の運命から逃れる事ができたの」


半年も……他の人は何をしていたの?


早く「カラダ探し」を終わらせようとしなかったの?


一緒にやったメンバーの気が知れない。


「最後のカラダを残すだけってなった時……ママはこの家にはいなかった。どこに行ったかもわからなかった」


そう遥が呟いて、私はお母さんの遺影を見た。