私の部屋とそんなに変わらない。
「ずっとひとりでここに住んでるの? 隠れ家的で何かいいよね」
「何がいいのよ……こんな所、いい思い出なんてひとつもないわ」
遥の表情が曇る。
そっか、そうだよね。
「カラダ探し」を頼まれて、ずっと日菜子のお兄さんに……。
それも含めて、いろいろ聞きたい事があってここに来たんだ。
「遥さ、もう日菜子のお兄さんを殺すなんてしないよね?日菜子にバレちゃったし、ほら、殺しても日が変わったらなかった事になるんだからさ」
日菜子に対する気持ちは後で聞くとして、今はお兄さんを殺す無意味さを気づかせないと。
「なかった事になんてならない。私がやった事は……消えたと思った世界は、今もどこかで続いているのよ。その世界では、香山君は死んでいるの」
あ、翔太だったか誰かに聞いた事がある。
「えっと、パラレルワールドってやつ?」
「私はそうだとは思ってないわ。そんな世界こそ、人が自分の行動を後悔して作り上げた幻想よ」