「そ、そうだけど、開けてよ。せっかく来たんだからさ」


これを見られたくなかったから、誰にも家の場所を教えなかったのかな。


日菜子には教えたのに。


「あんたにだけは見られたくなかったわ! いいから帰ってよ! こんなの私の家じゃない!」


子供みたいに叫ぶ遥に、私は正直とまどった。


いつも冷静で、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているのに、今はただの駄々っ子。


わがままを言って困らせる子供と変わりないように思えたから。


いや、もしかすると、これこそが遥の素の姿なのかもしれない。


「帰らないよ! 話があって来たんだから! 話をするまで帰らないんだからね!」


「私はあんたに話す事なんて何もない! わかってるでしょ!? 私は香山さん兄妹を殺したの! 恨みを晴らすために!」


ドアを開けようとしても、鍵をかけられているのか、向こう側からドアノブを抑えられているのか、全然開く気配がない。


「日菜子は関係ないでしょ!? お兄さんを恨んでても、日菜子には殺すところを見せたくなかったから、遥が殺しているって知られたくなかったから、日菜子を殺したんだよね!? 私にはそう聞こえたよ」