これのどの辺りにプレサージュなんてイメージがあるのだろう。


「た、確かここの一階に……」


階段の手すりも、窓の格子も錆びて朽ちている。


どこかの廃墟とあまり変わらないよ。


本当にここでいいのか不安になりながら歩いたアパートの前。


日菜子に教えてもらった部屋に、「三神」という表札が掲げられていた。


チャイムのスイッチを押してみたけど、鳴ってはいないようで。


コンコンとドアをノックして、遥が出てくるのを待つ。


まだここに遥が住んでいるなんて思えないんだけど、もしも別の人が出てきたら、逃げる準備はできている。


しばらくして、カチャッという音と共に開いたドア。


「誰よ、こんな時間に……」


眠そうな顔で現れたのは……間違いなく遥だった。


中学校のジャージを着て、家の古さと妙にマッチしている。


「あ、遥、おはよ……」


私の顔を見るなり驚いた表情になって、勢いよくドアを閉めた。


「な、なんであんたがここを知ってるの!? あ、香山さんが言ったんだね!?」