そうなると、「赤い人」に見つかってから、聞いた事が全部怪しく思える。
昨夜の事を、私の行動、聞いた事と、日菜子の行動を照らし合わせてみると……全然違う。
まるで私だけが別の校舎にいたかのような錯覚を覚える。
「赤い人」が武司に殴られて怒るまでは日菜子と一緒にいた。
それは間違いない。
「じゃあ、私がドアを叩いた後すぐに階段に走ったんだ?」
「うん、逃げなきゃって思って。二階はまだ誰も調べてないでしょ?」
私が一周する間に、すばやく移動したんだな。
「遥の所には行ってないんだね? 復讐しようとか……考えてないよね?」
それだけが心配だ。
遥という名前を出しただけで、表情が曇ったのがわかるくらいだから。
「なんで私が遥の所に……昨日の今日で納得できるほど人間ができてるわけじゃないよ」
そりゃそうだよね。
今は生きているとはいえ、自分とお兄さんを殺した相手なんだから。
だったら、小川君に化けていた黒くて怖い人が言っていた事のすべてが嘘だったのか。
だまされないように、合言葉とか決めておくべきかな。