「明日香……そこ、お尻」


え!?


肩かなと思って叩いたのに、日菜子は逆向きに寝てるの!?


「あ、ご、ごめん」


添えた手を、サッと離して謝った私は、日菜子から返事があった事に安心した。


皆が次々と落ち込んでいったら困るから。


「別にいいけど。それで、何の用なの?」


布団のせいでフィルターがかかったように聞こえる日菜子の声。


メールは見てくれたのかな。


私がここに来た事には驚いていないようだ。


「あのさ、『昨日』の夜、視聴覚室調べるって言って、どこかに行ってたのって……遥の所に行ってたの?」


私が尋ねると日菜子は無言で。


ゴソゴソと布団の中で動いたと思ったら、ムクッと起き上がり、布団を身体に巻くようにして顔だけ出した。


起きたばかりのボサボサの髪、眠そうな目。


そして首を傾げて。


「私、視聴覚室なんて行ってないよ? 明日香が『赤い人』に見つかった後、すぐに二階に行ったもん」


と、不思議そうにそう言ったのだ。


「え!? 嘘! 私が戻ったら日菜子が……」


そこまで話して、私は気づいた。


あれはもしかして……黒くて怖い人だったの?


小川君の姿をしていたように、その前は日菜子の姿をして。