「ひっ!! は、袴田君!!」


中島君を見るなり、荷物を置いて駆けだす武司。


昨夜は私が止めたけど、あの程度で気がすむとは思わなかったから、これは想像できた。


どうか、中島君が死にませんようにと祈りながら、私は屋上へと向かった。




階段を上り、屋上に出てみると……そこに遥の姿はなかった。


ぼんやりとした表情で、翔太が空を見ているだけ。


白い雲が浮かぶ青い空に入った亀裂。


私はどうも、そっちの方が気になって、のんびりと風景を見る事ができなくなってしまったよ。


「翔太、また美雪の事を考えてるの?」


そう尋ねて、出入口の前にある段差に座っている翔太の隣に腰を下ろした。


「ああ……」


照れもせずに、溜め息のような返事をする翔太。


今、この世界で美雪の事を覚えているのは6人だけ。


誰にも相談できない悲しみが、翔太を悩ませているんだろうな。


「美雪は美紀の『呪い』を解こうとしてるんだよね。私も何かできないかと思って、美子の『呪い』を解こうとしてるんだけど……なかなか上手くいかないね」