生産棟の二階で言っていた事は何だったの!?


日菜子の事も、遥の事も、全部嘘だったの!?


いつもとは違う重い空気はこれだったの!?


後ろを確認したい。


振り返ってでも、何が背後にいるのか確認したい。


そうは思うものの、わかっていて振り返る勇気はなくて。


私は必死に西棟の廊下を走った。


今思えば、生産棟の二階からホールまでの移動も、私の背後から一定距離を保ったまま、近づきも離れもしなかった。


カラダが見つかった事がうれしくて、何も考えていなかったけど、私が向きを変えた瞬間でさえ、背後から足音が聞こえたのはおかしいと思うべきだった。


今も、同じ距離で足音は聞こえている。


間違いなく背後にいて、私が振り返るのを待っているかのように。


そんな私が西棟の廊下を駆け抜けて、飛び込んだ場所はトイレ。


中島君の反応を見る限り、誰かにどうにかしてもらう事は無理だ。


だとしたら、自分で確認するしかない。


振り返る事ができない私が確認する方法。


携帯電話を開き、それを正面に向けた私は……。


鏡に映る自分の姿と、その背後にいる、黒く輪郭がぼやけた人を見てしまったのだ。