小川君が持っていた右脚がもうすでに棺桶の中に納められていて、中島君は小川君がいないと言っている。
今、振り返れば「赤い人」が来てしまう。
「じゃあ……今、私の後ろにいるのは誰なの?」
小川君と同じ存在感、息遣いなのに、中島君はこれが小川君じゃないと言う。
「後ろって……ひっ!! な、何だよそれ!!」
携帯電話の照明を私に向けた中島君の顔に、恐怖の色が浮かび上がった。
ゆっくりと後退したかと思ったら、その動きは早くなり、逃げるようにホールから出ていったのだ。
一気に背中を駆け抜ける悪寒。
中島君が何を見たのか、気になるけれど、振り返る事ができない!
もしも小川君じゃないのなら、いつ背後から、何をされるかわからないという恐怖が私の足を動かす。
棺桶の周りを回るようにして、向きを変えようとしたけど……ピタリと貼りつくように小川君はついてくる。
「お、小川君だよね!? そうだと言って!」
「そうだよ」
ダメだ! やっぱり信じられない!
あんな事を言われたら、普通なら必死に何か言おうとするはずなのに、どうして何も言わないの!?
おかしいじゃない!
右脚を持っていたのに、すでに右脚は納められていたし、もうわけがわからない。