どうしてそんなに慌てているのかはわからないけれど、一階は調べ終わったに違いない。


何にせよ、会って話をしてみればわかる事だよ。


小走りで向かった教室。


何だか……空気の重さが違う。


足にまとわりつく感覚が、昨日までとは違うように思えるんだけど気のせいかな。


そして、私は小川君が入った教室のドアを開けた。


「小川君? いるんでしょ?」


暗くてよく見えない教室の中に携帯電話の照明を向けて、私はそう尋ねた。


教室真ん中辺り、机と窓側の壁の間でうずくまっている人影が、見えるけど……返事がないな。


何かに怯えているのか、ガタガタと震えているようだ。


「小川君、明日香だよ。どうしたの? こんなところで」


何か気になるな。


カラダを探しにこの教室に入ったわけじゃなさそうだし、ただ隠れるために逃げ込んだって感じだ。


だとすると、ドアを開けっぱなしはまずいのかな。


手を伸ばし、背後にあるドアを閉めた私は、小川君に近づいた。


「大丈夫、ドアは閉めたから」


外に声が漏れない程度の大きさで話しかけながら、さらに小川君に近づくと……。


その身体全体で抱えるようにして、脚を持って震えていたのだ。


幸恵の……脚?


靴の形からすると右脚のようだけど、一階で見つけたのかな。


だとすると、まだ誰も二階には来てなかったんだ。