「うっ……日菜子、なるべく見ないようにしよう」
そう言って、日菜子の手を引いて歩きだすものの、見ないようになんて無理だ。
あまり何度も見たくはないし、ここは分かれた方がいいかな。
「日菜子は視聴覚室をお願い。私は生徒会室を調べるから」
「う、うん……」
近づくにつれ、胃から逆流するような感覚に襲われる。
ヌルヌルとした足元に、滑ってしまいそうになりながらも、何とか部屋の前にたどり着いた。
「じゃあさ、早く調べた方が手伝いに行くって事でいい?」
「わかった」
そう呟いて、日菜子は視聴覚室に入った。
私は生徒会室。
どちらも、調べる箇所の少なさから言ったら大差はない。
視聴覚室の方が、外の死体を気にしなくていい分、気が楽かなと思ったんだけど……。
人を気遣ってる余裕なんて私にはなかったんだった。
「もう、遥達は一階を調べ終わったかな」
今日は生徒玄関前で別れたきり、一度も会っていないから状況がわからないよ。
小川君について行かせたけど、ふたりで大丈夫かな。
気遣う余裕がないって考えたばかりなのに、結局人の事を考えているよ。
ダメダメ、「カラダ探し」に集中しなきゃ。
何個か並んだ机の中を一応調べた後、教室の後ろにあるロッカーへと歩を進める。