もう、限界なのだろうか。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
もう一度……「赤い人」の咆哮。
それと同時に激しい音と、激しい振動が私を襲った。
ドォォォン!!
という、壁からの音に驚き、慌てて辺りを見回す。
武司が……やられたんだろうな。
私がこんな事を言える義理じゃないけど、武司は持った方だと思うよ。
「赤い人」に向かっていって、私が生産棟を1周するまで時間を稼いでくれたんだから。
何をしたかったのかはわからないけど、そのおかげで私は逃げられた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
何度も何度も、咆哮が校舎を震わせる。
そして、逃げた私を追いかけたのだろうか。
歌を唄わずに、怒りを撒き散らすようにして、「赤い人」の声は遠ざかっていったのだ。
ペタペタと、徐々に小さく。
「日菜子、大丈夫みたいだよ」
どこに行ったのかはわからないけれど、私みたいに1周して戻ってこないのであればだけど。
さて、さっきの続きだな。
調べていた所から再開すればいいだけ。
恐らく死んだであろう武司のために、私は死ぬわけにはいかない。