思いもよらない武司からの提案。
分かれて調べた方がいいのは確かだけど、本当に大丈夫かな。
「何だ? その目はよ。俺がサボるとでも思ってんのか?」
「普段の武司を見てたらね……そう思うでしょ」
私が言うと、チッと舌打ちをして顔をしかめた。
視聴覚室の方に数歩移動して、ポリポリと尻をかいた後、振り返ってするどい眼差しを私に向けたのだ。
「あのバカにできた事が、俺にできねぇはずがねぇだろ。ナメてんのか?」
いや、そういうわけじゃないんだけどさ。
今までの武司の態度を見てると、どうも人がいない所ではサボるような気がして。
「2部屋、任せても大丈夫?」
「誰に言ってんだ? あのバカにまた、情けねぇ事されたらたまんねぇからよ」
情けない事か。
武司はあの、高広の土下座の事を言っているのだろう。
あんな姿は私も初めて見たし、少なからず武司はショックを受けたに違いない。
それが、閉じこもっていた殻を破るきっかけになったのだ。
「わかった、任せたよ。そっちが終わったらこっちを手伝いに来てね」
振り返りもせずに手を上げて、武司は歩いていった。
任せても……大丈夫だよね?
高広が土下座して、結子が元気を取り戻させてくれた。