「こんな世界、壊れてしまえばいいか。そんな目に遭ったなら、そう思っても仕方ねぇかな……」


女子に手を上げた事がない高広にとって、少なからずショックを受けたようで。


遥を気遣うように、穏やかな口調で呟く。


でも……本当にそれだけなのかな。


確かに辛い事だったとは思うけど、他にも何か、決定的な事があったんじゃないかな。


どう控え目に見ても遥は強い。


「カラダ探し」を頼まれて、そこで復讐をしているけれど、頼まれる以前にはそんな事をしなかったのだから。


強い遥の心が折れるような事が、他にもあったとしか思えない。






八代先生が車を走らせている間に、その時は訪れた。


やりきれない思いを抱えて、私達は冷たい風が吹く、生徒玄関の前の広場に呼ばれたのだ。


1時間、日菜子は泣き続けて、ようやく泣きやんだようで。


私は隣で寝息を立てる遥を揺すって起こした。


「は、遥……時間だよ」


「う……ん。……学校? という事は、私を殺さなかったのね? それでいいの? 香山さん」


その問いに、日菜子は何も反応しなかった。


遥を許せないのか、それともお兄さんを許せないのか。