助手席からすすり泣くような声が聞こえる。


もう、いっさいかばう事なんてできないと、日菜子も感じて泣いているんだろう。


武司がなんとかなって、もう大丈夫だと思ったのに……今度は遥と日菜子。


私が日菜子を助けようとしなければ、こんな事にはならなかったのかな。


遥が日菜子を殺して、お兄さんを殺して。


「カラダ探し」が終わるまでそれを続けていれば、日菜子は悲しい思いをせずにすんだんだ。


変に振りかざした正義感が、日菜子の心に深い傷をつけたのかと思うと後悔しかないよ。


遥の過去は知る事ができたけど……まだ何か、隠しているような気がしてならない。


話をしているうちにもう23時。


あと1時間で「カラダ探し」が始まってしまう。


「……気分を変えるために少しドライブでもしようか。本来なら、僕は早く帰れと言わなければならない立場だけど」


さすがにこの空気のまま「カラダ探し」をさせるのはまずいと思ってくれたのかな。


「だったら、時間まで私は眠らせてもらうわ。香山さん、私が憎ければ殺しても構わないわよ。抵抗はしないから」


走りだした車の中で、そう言って遥は目を閉じた。


日菜子のすすり泣きはまだ聞こえていて、それがやむ様子はない。