「な、何よ……」
聞けば余計に傷つくだけなのに、日菜子はどうして聞こうとするかな。
少しでもお兄さんが悪くないと思える部分を探そうとしているのか。
でも……遥が語った事は、そんな期待をあっさりと打ち砕いたのだ。
「『妹はどうだった? 生意気だっただろ、あいつ』『すぐにおとなしくなったぜ。ずっと泣いてたけど、それがたまんねぇ』ってね。この意味、わかるわよね?」
ひどすぎる……。
日菜子が知らない世界の話とはいえ、本人に聞かせるべき内容じゃないよ。
その話を、日菜子はどんな気持ちで聞いていたのだろう。
「日菜子だけじゃなくて、もしかすると明日香もレイプされていたかもしれないわよ? あいつらは、当時の1年生も襲っていたから」
ドキッとする言葉。
思わず股を閉じて、その状況を想像してしまった。
「ああ!? なんだそりゃあ! ぶっ殺してやる!!」
「高広、日菜子のお兄さんはもう死んでるよ……」
ダメだ……本当に気分が悪いよ。
今の私じゃない。
今の日菜子じゃない。
頭の中ではそれはわかっているけど、でも私だし、日菜子なんだよね。