八代先生にとっては、思い出したくもない日々だろう。
「そんな中で男子が、性欲に走る事はすぐにわかったわ。そして、それは私達に向けられたの。昼は家で寝て、放課後に気がすむまで女性を襲う。夜になれば私達がその餌食になったわ」
なにそれ……。
いくら「カラダ探し」をしてるからって、人を道具みたいに。
日菜子には悪いけど、お兄さんが殺された事をかわいそうだと思えなくなってきたよ。
この話が本当なら……だけど。
「だからって……お兄ちゃんを殺さなくても……」
今の話を聞いて、日菜子の言葉に力がなくなる。
殺されても仕方がないくらいの事を、お兄さんがやっていたと知ったからだろう。
「しっかし、ずいぶんひどい話だな。俺も、あの武司でもそんな事しなかったぜ?」
それは……ふたりとも純粋だもん。
よくも悪くも、子供みたいなところが抜けてないから。
「香山さん、殺さなくてもいいなんて言える? 彼と友達が武勇伝のように言っていた事……教えましょうか?」
遥の言葉に、ますます力が込められていく。
もうこれ以上は聞きたくない。
気分が悪くなるよ。
クラスの女の子が、初体験をすませたとか嬉しそうに話しているのとはわけが違う。