「もうどこだっていいよぉ。正直、買い物どころじゃないんだ。嫌な事があったからさ」
「だったら……私の家に来る? ゆっくり話も聞けるし」
結局、今歩いた道を引き返して、私の家に向かった。
「ただいまー」
家に戻った私は、日菜子に部屋に行ってもらって、キッチンに入った。
お弁当箱をテーブルの上に置いて、冷蔵庫から缶ジュースをふたつ取って、部屋に向かった。
嫌な事ってなんだろう?
日菜子は気分屋だからなあ。
テンションが低い時に話しかけても、悲観的な事ばかり言うから、友達とケンカでもしたんだろう。
話を聞いてあげれば落ち着くだろうし、ひとりで0時まで待つのも退屈だからちょうどいい。
「お待たせ。オレンジジュースでいいよね?」
部屋のドアを開けて、ベッドに腰かける日菜子に缶ジュースを見せると、小さくうなずいた。
そして、ポツリと呟いたのだ。
「明日香さぁ、『カラダ探し』って知ってるよね? あの怪談話の」
テーブルの上に缶ジュースを置くと同時に、日菜子が言った言葉で私の手は止まった。
うちの学校の生徒なら、誰もが知っている怪談話。
だから、日菜子の口からその言葉が飛び出してもおかしくはない。



