窓の外を見ながら、その時の状況を想像していると……。
「あ……今の日菜子?」
家に帰ろうとしているのだろうか。
道を歩いている日菜子とすれ違ったのだ。
そして、少し離れて日菜子の後ろを歩いている人。
上から下まで黒い服で、頭にはフードを被っている。
「せ、先生、引き返して!!」
明らかに怪しいその人物が、通り魔に違いない。
このままでは、今日もまた日菜子は殺されてしまう!
「な、何!? 急にそんな事言われても……ちょっと待って。そこの交差点で切り返すから」
私の声に、慌てた様子で八代先生が交差点まで車を進める。
今すぐ飛び出していきたいけど、私の足じゃあ車よりも遅いと思うから。
今来た道を引き返し、日菜子の後を追いかけた。
早くしないと、間に合わないかもしれない。
「どうしたんだよ、何があった?」
「日菜子が誰かに後をつけられてた。『昨日』日菜子は誰かに殺された……危ないの!」
私ひとりだと、逆に殺されてしまう可能性があるけど、今は高広がいる。
間に合いさえすれば、取り押さえる事ができる。
「先生! そこを右!」
「も、もっと早めに言ってくれないかな!!」
車内はもうパニック状態。
道を進み、日菜子の家が見えたところで……。
黒い服の人物が、前を歩く日菜子に向かって走りだしたのだ。