突然走り出して、ふたりは何があったのか理解できないだろう。


でも、ゆっくり話してる暇なんてない!


あれが美紀の言っていた黒くて怖い人だと気づいたのは、庭の半分までやってきた時。


「な、なんだよ急に!! おい、先生……って」


八代先生は声をかけた高広を置き去りにするように、私よりも前をものすごい勢いで走っている。


さ、さすが元ラグビー部。


先に走り出した私を、ぐんぐん引き離して門を出たのだ。


「ふ、ふざけんなよ! 何だその速さはよ!!」


そう叫んで、駆け出した高広。


私よりも後ろにいたのに、足音はもう隣から聞こえる。


高広に追い抜かれて、何とか門を通り過ぎた私は……振り返って屋敷に懐中電灯を向けた。


黒くて怖い人は……門から少し離れた場所。


私からほんの数メートルという所で立ち止まっていたのだ。


気づくのがもう少し遅れていたら、どうなっていた事か。


「い、いきなり何なんだい!? 何があったって言うんだ!?」


私には見えている黒い人が……ふたりには見えていないようだ。