じゃあ、これはいったい何なの?
動けない私の視界の左側を、白いものがゆっくりと侵食していく。
怖くてそれが何なのかと確認する事もできない。
肩に置かれた手が、徐々に私の顔に移動して……。
ググッと力が込められて、顔が強引に左側を向けられた。
横になった白い顔が、私の目の前でニタリと微笑む。
「ねえ明日香……私のカラダを探して」
心臓が破裂してしまいそうなほどの恐怖。
冷たい感覚が一瞬で全身を駆け巡る。
何かがおかしい幸恵から逃げるように、動かない身体を動かそうとして床に倒れ込んだ。
振り返って見てみると……私に頼んだ幸恵は、首が不自然な曲がり方をしていて……。
何かで強打されたのか、首の辺りが変色していた。
折れた首、ダラリと垂らした頭部をそのままに、用はすんだとばかりに倉庫から出ていったのだ。
何が起こるのかわからないこの廃屋で、よりによってこんなタイミングで頼みに来るなんて。
「あ? お、おい明日香! どうした!?」
幸恵の姿に驚いて、放心状態になっていた私に、地下から戻った高広が声をかけた。