「入れてもらえないって……誰に?」
その答えは八代先生もわかっているだろうに。
今、この廃屋にいる可能性があるものと言えば……。
「たぶん、黒くて怖い人……」
私のその言葉に、八代先生の表情がこわばる。
「カラダ探し」をやった事があるから、今まで一度もそんなものを見た事がないから大丈夫だと、たかをくくっていたのだろうけど。
私が入れないなんて予想外の出来事だ。
「おい、何してんだよ! 早く来い! 変な部屋があんだよ!」
下へと続く階段の奥から高広の声が聞こえるけど、私は行く事ができないし。
「八代先生、私はここにいるから見てきてください。何があったのか教えてくださいね」
「えっ!? い、伊勢君が行ったなら、彼から聞けば……わかったよ。生徒だけを危険な目に遭わせられないからね」
話している間にも激しい葛藤があったのだろう。
何度も表情を変えて、諦めたように地下室へと向かった。
ふたりが下りてわずかな時間が流れた。
地下から話し声が聞こえるけど、何を話しているかは聞き取れない。
その声から、先生が興奮している様子は伝わるけど。