「まだ続きがある。そのモヤは、家に入って右にある倉庫から発生しているようだと」
発生……か。
ずっと出ているのなら、もう小野山邸は真っ黒になってそうだけど、先生の口からそれが出ないという事は、そうではないのだろう。
それに……場所が気になる。
家に入って右にある倉庫は……高広達が美子の幻を見たって場所じゃないの?
もしも……もしもだよ?
その黒くて怖い人の正体が黒いモヤだとして、その時美子の中に入っていたとしたら?
「先生、高広達が小野山邸で見た幻については聞いてますよね? それで見た美子は、その時にはもう死んでいたんですか? 死んでるはずだって聞きはしたんですけど」
自分の考えに確信なんて持てない。
いつもテストで、正解を書いているのに迷ってしまって、間違った答えに書き直すなんてよくあるから。
「うん? 幻か……ちょっと待ってね。それはこのメモ帳に……」
そう言ってノートを机の上に置いて、胸ポケットから例のメモ帳を取り出した。
「えっとね、美子が倉庫に閉じ込められたやつだね。この時には……うん、美子はもう死んでいる。美紀は、美子の幽霊と遊んでいたんだ。それからしばらくして……美紀も死んだ」