「それは違いますね」
「……そ、そう」
あっさりと私に否定されてガッカリした様子の八代先生。
仮に黒くて怖い人がふたりの父親なら、何とか説得をして、美紀と美子を成仏させられそうなんだけど……。
そうでないから話がややこしいんだよ。
見た事も聞いた事もない黒くて怖い人をどうにかするだなんて。
「あった、これだ」
探し始める事1時間弱、すでに高広は寝息を立てていて、私も壁の紙からノートへと移った時だった。
八代先生が手にしていたノートの真ん中辺りにその記載はあった。
「えっと……小野山の家に入ると、黒いモヤのようなもので何も見えなくなるらしい。気づいた時には敷地の外で、その間の事は何も覚えていない。当時の僕はすでに『カラダ探し』をした後だったから、こんな事にはならなかったようだね」
「黒いモヤですか……それが黒くて怖い人とか? だけど、人じゃないならどうやって追い払えばいいんだろう」
普通の人間ではないとは思っていたけど……モヤだなんて。
実体のないものを追い払う事ができるのかな。