「多いよね。片づけようとは思うんだけど、これだけあるとなかなかね」
ハハッと苦笑して、ソファで横になる高広を一瞥して隣の部屋に入ってきた。
壁に貼られた紙から調べるべきか、ノートから調べるべきか。
見るのが一枚ですむ壁の紙を見回しながら、それらしい文字がないかを探した。
どれもこれも、私が求めているものは書かれていない。
壁の紙に書かれているそのほとんどが「赤い人」についてで、小野山邸の黒くて怖い人の事は何も。
「美紀に頼まれた黒くて怖い人か。そもそもそれが誰なのかという事だよね。あの家には美紀と美子、両親と和子さんくらいしかいなかったはずだし」
机の上に置かれているノートをパラパラとめくりながら、八代先生は不思議そうに呟いた。
「先生が言ってた通り、家に入ると気が狂うってのと関係があるんですかね?」
「もしかすると、ふたりの父親の幽霊かもしれないな。ふたりを失った悲しみのあまり、死んでなお美紀と美子を探しているとかさ」
うーん……確か美紀は、黒くて怖い人はお父さんが呼んだって言ったんだよね。
呼んだっていう事は、その時は父親がいたわけだから、別の人だよね。