私が尋ねると、八代先生は眉間にシワをよせ、目を閉じて必死に何かを思い出そうとしている。
過去に誰かから聞いた話なのだろうか。
頑張っていたけど……ついに諦めたのか、フゥッと溜め息を吐いて顔を上げた。
「僕の家に資料があるんだけどね。何せずいぶん昔の話だから、それを見ないとわからないよ」
あの、「赤い人」関連の部屋か。
「カラダ探し」をしていると、変な事ばかりが起こるから嫌なんだよね。
特に八代先生のあの不気味な部屋は、何が起こってもおかしくないような雰囲気がある。
「でもね、浦西君や伊勢君が小野山邸に行った時に、ひとりの年配の男性に殺されそうになったらしいんだ。執拗に追いかけられたけど、門から出た瞬間、その男性は正気に戻ったみたいだね」
何かがその男性に取り憑いたのだろう。
幽霊……「赤い人」や美紀に出会うまでは、そんな話を聞いても信じなかっただろうけど、今は素直にその存在を信じられる。
詳しい事は家に帰ってみないとわからない。
それならばと、17時で仕事を切り上げて家に連れていってくれると約束してくれた。