「頼む! 俺じゃあ何もできねぇんだ! 一緒に『カラダ探し』をしてるお前にしか頼れねぇ! 頼むから……明日香を守ってくれよ!」
もしかして、ここに来た理由はそれを言うため?
武司が動かない事に腹を立てたわけじゃなくて、私を助けてって言うために。
普通なら、好きな人のこんな姿は情けなくて見たくもないだろうけど……私は違った。
動かない武司を殴りもせずに、私を守ってほしいと、プライドを捨ててまで頼んだ高広の姿は……決して情けなくなんてない。
「カラダ探し」とは関係がなくても、高広に守られているかと思うと、すごくうれしい。
「明日香を助けるためにあゆみは死んだかもしれねぇ。だからって、お前は腐るなよ! そんな姿、俺は見たくねぇんだよ! 気がすむまで俺を殴ってもいい! だけどよ、明日香だけは……頼む! 守ってくれ!!」
絶叫にも似たような声で、頭を床にこすりつけながら頼み込む高広。
でも……武司は変わらずぼんやりとしたままで、返事をしてくれそうにはなかった。
「も、もういいよ。やっぱりダメなんだよ。武司は何を言っても変わらないから……頭を上げて」
「いや、ダメだ! まだ足りねぇんだよ! 武司! この通りだ!」
軽く頭を上げ、もう一度床に頭を打ちつける。
何度も何度も……。
その状態で30分。
何も反応してくれない武司の前で、高広はその体勢を崩さなかった。