10分ほど、小走りを続けて……武司の家に到着した。


何も言わずに家の玄関のドアを開けて、勝手に家に上がり込む。


「た、高広! お、お邪魔します」


玄関で靴を脱いで、急いで武司の部屋がある二階へと駆け上がると、すでに高広は部屋に入っているらしくて……。


私が部屋の中をのぞくと、高広は壁にもたれる武司の前にいた。


何をするつもりなのか……高広はその場で正座になったのだ。


殴る……わけではなさそうだけど、だったら何をするのだろう。


そんな疑問を感じながら入った武司の部屋。


相変わらず武司はぐったりとしていて、夜の校舎で見る姿と同じ。


「ね、こんな具合で全然動いてくれないんだよ。『昨日』までの高広が何をしてもダメだったんだ」


私がそう言った直後、高広が動いた。


勢いよく頭が下がり、それが床に当たってゴンッと音を立てる。










何が起こったのか……私の目の前で、あの高広が、武司に頭を下げたのだ。


その光景は、私には信じ難いものだった。


高広と武司、事あるごとにぶつかるくらい仲が悪いのに……。


その武司に、高広が土下座をしている姿なんて初めて見た。