「え? ああ……頬っぺたをぶたれたかな。先に手を出したのは私なんだけどね」
思い出しながら高広を見ると……眉間にシワをよせて、怒っているのがわかる。
もしも、中島君の名前を出していたら、怒りに任せて殴りに行っていたかもしれない。
「誰だそいつは? 明日香に手を出したバカは、俺がシメてやる」
それじゃあ意味がないと思う。
「言わない。だってさ、高広がその人を殴ったとするでしょ? でもその恨みは、私や武司に向くかもしれないでしょ? だから……武司が立ち直ってくれないとさ」
「カラダ探し」で武司が動いてさえくれたら……。
中島君の横暴を止められる人は、今回のメンバーの中にはいないから。
「……わかった。武司を何とかすればいいんだな?」
そう言って高広は、今歩いてきた道を引き返したのだ。
「えっ!? ちょっと、高広! どこに……」
って、武司の家に決まってる!
学校に行く前に、まずは武司の家に乗り込むつもりなのだろう。
殴るだけでは武司は何も反応しない。
慌てて高広を追いかけるように、私は駆けだした。
止めたところで高広が、武司の家に行くのは止まらない。
毎日そうなっているのだから、もう止めようとも思わないんだけど。
足早に歩く高広に、ついていく事で精一杯。