今でも十分冷たくするどい空気なのに、さらにそれが研がれたような感覚へと変わる。
冷たい手で心臓を握られたような恐怖。
「赤い人」に向かっているような形になってしまっていて、身体がそれを拒み始めた。
足が……思うように前に出ない!
走れてはいる……だけど、階段まであと少しだと言うのに、ガクガクと震えている。
蓄積された「赤い人」への恐怖が、私の身体を蝕み始めた。
それでも何とか階段に差しかかり、転がり落ちるようにして駆け下りた。
「キャハハハハハッ!!」
もう、手を伸ばせば触れられる位置にまで迫っている!
踊り場まで下りる事ができた私の背後から、ドンッという音がする。
まさか……また階段を飛び下りたの!?
そんな事をされたら、私なんかじゃ逃げきれない!
あと少しなのに……ホールまであと少しなのに!
「キャハハハハハッ!!」
踊り場から、一階に向かって駆け下りていた私の背中に、ドンッという激しい衝撃が加わった。
「あうっ!」
一瞬、目の前の景色が飛んで……。
気づいた時には、私の身体は前のめりに。