「な、何やってんのよ……これじゃあ調べてる意味がないじゃない!」


手を伸ばして拾い上げたカラダ……幸恵の左胸。


もしかして、「昨日」中島君が調べていた場所もこんな風にカラダをスルーしているかもしれない。


人に「赤い人」を押しつける、一日で全部見つけると豪語する……考えれば考えるほどとんでもない人に思えてきた。


こんな所にカラダを置き去りにして、よくもあんな事が言えたものだ。


私の嫌な予感が当たってしまったのは、本当に悲しい。


何がって、結果的に私達の邪魔でしかないという事が。


持ちにくい胸の部分を抱え、私は準備室を出て、音楽室のドアに耳を当てた。


廊下の音を……せめて、私がこの部屋から出ても誰にも見つからない状況じゃないと、ホールまで逃げきれないから。


足音は聞こえない。


だけど……何かかすかな振動のようなものが伝わってくるんだけど……これは何?


耳に感じるその振動の正体に疑問を感じていた時だった。


ガチャンとドアノブが回る音が聞こえて、ドアに身体を押されてしまい、私は転がるように床に倒れてしまったのだ。