ひと通り見て、隣の準備室に向かった。
真っ暗とはいえ、「赤い人」や操られた人達のいない広い空間は安心感がある。
安心したり恐怖したり、今日は本当に感情が忙しいよ。
中島君が逃げて、すでに開いていたドア。
準備室の中に入ると、ギターが床に散乱していて、足の踏み場もない。
「散らかした方が探しにくいんじゃないの……」
確かに棚には見やすくなっているけどさ。
床が大問題だ。
片づけるつもりはないけど、調べやすくするために、ギターを少し棚に戻していく。
遥が見たら、無駄な事はするなとか言いそうだけど、この部屋でチェックは終わりだ。
何もなければそれでいいし、大丈夫だとわかったなら明日からは放っておけばいいんだから。
そう考えながら、ギターを戻していた私の手が途中で止まる。
……ちょっと。
嘘でしょ?
携帯電話の照明をそこに向けて……私の心臓がドクンと大きな音を立てたのを感じた。
床に散らかるギターの中、なぜこれに気づかないのかと思う程の存在感を放つ、幸恵のカラダがそこにあったのだ。