いくら乱暴に調べても、細かく見るしかないこの場所を見落とす事はないと思うけど。
携帯電話の明かりを向けると、さっそく掃除用具入れの中から飛び出したデッキブラシやホウキが私を出迎えた。
わざわざこんなに散らかさなくてもいいのに。
そう思いながら、男子トイレと女子トイレ、さらに隣の教室も調べて音楽室に。
ここまではカラダがなくて、中島君は雑に調べているわけじゃないんだなと、疑った事を悪く思い始めていた。
ここには嫌な思い出がある。
理恵に迫った健司が、留美子と私を包丁で刺した場所。
当の本人達は何も覚えていないのが救いかな。
覚えていたら、ギクシャクしていただろう。
「赤い人」から必死に逃げようとしたのだろう。
机や椅子が投げられたのか、本来あるべき所にない。
まあ、音楽室は調べる場所が少ないからそれでもいいんだけどさ。
グランドピアノに近づいて、屋根をグッと押し上げて中を確認する。
「留美子、それは『屋根』って言うんだよ……って理恵が言ってたな」
そっと戻して、転がる机に照明を向けた。
残るカラダを考えると、中に入っているはずがないから、表面をなでるように見るだけ。