コツ……。
コツ……。
祈りが通じたのか、武司は一階に向かって階段を下りていた。
やった、遥は大変だろうけど、これなら三階を調べる事ができる。
「赤い人」の歌も聞こえないし、行くなら今しかない。
武司が踊り場まで下りる前に、三階に向かう階段へと走った私は、その勢いのまま駆け上がった。
音を出しても大丈夫なのはありがたい。
これが「赤い人」だったりしたら、足音だけで気づかれてしまうから。
トントントンッとテンポよく上った階段。
踊り場を抜け、顔を上げて三階の廊下を見上げて、さらに駆け上がる。
ここに来て、運が向いてきている。
そう感じずにはいられない。
美紀が私の前に現れてから、上手くいっているような。
到着した三階。
飛び出す前に廊下を確認すると……誰もいない。
これは罠かと思うくらいに順調に進む。
まずはトイレ。
廊下を走って、調べた部屋を抜け、男子トイレに駆け込んだ。
緑の光も届かない、真っ暗な空間。
空気の冷たさが、より一層増したような気がする。