カラダを……幸恵の右腕を棺桶の中に納めなきゃ。
急いで私は、階段に向かって駆けだした。
すぐそこにある階段を下りて一階。
空気は相変わらず冷たくて重いけど、「赤い人」がいる時ほどじゃない。
あれは……何と言うか、空気が死ぬような感覚だ。
植物でもあれば、一瞬で朽ち果ててしまいそうな、そんな恐ろしい空気。
できれば、二度と味わいたくないけど、そういうわけにはいかないんだろうな。
事務室の前、生徒玄関に向かう廊下を走ってホールにたどり着いた私は、棺桶に近づき、小川君がぬいぐるみから取り出してくれた右腕をその中に納めた。
頭、右腕、そして中島君が保健室で見つけた左腕。
これで3つ目。
世界が少し変わる。
そう思って辺りを見回してみるけど……「カラダ探し」のこの空間では、それはわからないよね。
そう言えば、さっき階段で聞こえた「赤い人」の声。
一階と二階から、挟み込むように聞こえていたけど、その理由がやっとわかった。
このホールが吹き抜けになっているから、ここから二階に声が抜けて聞こえたんだ。