だけど、背中から肉を削ぎ落とされてしまいそうな気配はビシビシと伝わってくる。
怖い……今までこんな事がなかっただけに、沈黙が逆に怖い。
目を閉じたまま、この奇妙な空気の中にいるのが辛い。
襲われるのか、大丈夫なのか……。
どちらにしてもこんな空気は耐えられないよ。
正気を失わないようにと、このカラダを納める事だけを考え続けて……。
「……してあかくする~」
ようやく、「赤い人」が歌を唄いながら動き始めたのだ。
徐々に遠くなっていく歌声。
た、助かった。
これほど、見つからなくてよかったと思った事は、今までに一度もない。
「どうしてどうしてあかくなる~」
生産棟の方に向かったのか、その声は次第に聞こえなくなって。
私は、安堵の吐息を漏らした。
これでしばらくは大丈夫かな。
武司はどこにいるのかわからないけど、見られさえしなければ大丈夫。
そう思って、ホールに向かうために目を開けた。
すると、私の目の前に……ヒラヒラと揺れる何かがあったのだ。
一瞬、それが何だかわからなくて、何も感じなかったけど……。