「キャハハハハハッ!!」
笑い声と共に、中島君が無残な姿に変わっているのだろう。
耳をふさぎたい。
だけど、耳をふさいでしまえば、「赤い人」がどう動くかがわからなくなってしまう。
さっきの声から察するに、中島君は「赤い人」から逃げるために武司を追い越したんだ。
そして、正面に「赤い人」を呼ばれて、逃げようと振り返ってしまったのだろう。
たとえ、音楽室からここまで、一度も「赤い人」を見ていなかったとしても……正面に呼ばれてしまえば、確実にその姿を見てしまう。
反射的にでも振り返ってしまったら最後。
壁一枚隔てて、私と中島君の運命がわかれたのだ。
しばらくして、「赤い人」が中島君の亡骸をもてあそぶ音がやんだ。
もう終わったとしたら……次はどっちに向かうの?
西棟か東棟か……。
ペタ……。
ペタ……。
「赤い人」が、動き始めた。
「あ~かい ふ~くをくださいな~」
歌を唄いだした……という事は、「赤い人」は私がここにいると気づいていない。
とは言え、まだ気は抜けない。
こんな状況下では素通りするよりも、見つかってしまう可能性の方が高いのだから。
「し~ろい ふ~くもあかくする~」