一階から足音が聞こえるなら、二階に逃げればいいに決まってる!


どちらに行っても「赤い人」に襲われてしまいそうな凶悪な空気。


動けば皮膚が切り裂かれそう……なんて生やさしいものじゃない。


二階の廊下に出ようとするだけで、身体中の皮膚がバリッと剥がされるような錯覚の中、私はそれを振りきるように廊下に飛び出した。


と、同時に階段の空間に響く「赤い人」の声。


大職員室の前の廊下を通って西棟の階段から下りる。


そう決めて、購買部の前を曲がった私は……目の前の光景に、絶望を感じた。









フラフラと、上半身が定まっていないような歩き方。


自分の意思で歩いているとは思えない足取り。


操られている武司が……そこにいたのだ。


運よく……と言っていいのか、武司は私に背を向けている。


だけど、これじゃあ西棟に向かえない!


追い越してしまえばその目で捉えられてしまって「赤い人」を呼ばれる!


もう、私が取れる手段はひとつしかなかった。


階段を駆け上がる足音が聞こえる。


考えている暇なんていっさいない!