ダメダメ、変な事を考えていたら、本当にそうなっちゃうよ。
大丈夫だと信じよう。
不安を振り払うように首を横に振って、私は階段を下り始めた。
東棟にいる可能性があるのは武司。
だけど、音では気づかれないはずだから大丈夫。
コツコツと小気味いい革靴の音を立てて、成功を確信して、右腕を抱きしめて一段一段下りる。
踊り場を過ぎ、二階に向かって。
あの笑い声はまだ小さい。
今なら行ける。
二階に到着した私はそう確信して、さらに下の階へと向かおうとした時だった。
「キャハハハハハッ!!」
突然、声の大きさが変化した。
それは、下からも二階からも聞こえてくるようで、私の判断力を狂わせるには十分な音量だった。
「な、なんで!? どこから……」
笑い声だけじゃない、「赤い人」から逃げる足音も聞こえる。
それは間違いなく、一階からこちらに向かって聞こえているけど……どっちの音を信じれば。
などと、迷っている暇はない。