笑い声は、こちらにどんどん近づいてきている!


嘘でしょ……階段を下りなきゃよかった!


「ど、どうしようどうしよう……」


隠れる場所なんて見当たらない。


それなのに近づく「赤い人」の笑い声と中島君の足音。


確実に迫る死に対して……私はあまりに無力だという事を痛感した。


「いい加減にしろよっ!! もう諦めろ!」




「キャハハハハハッ!!」













ふたりの声が……私の頭上を通り過ぎていく。


東棟に向かって。


隠れる場所がないと感じた私は、一か八か、一階に下りる階段の上に伏せて、通り過ぎてくれる事を祈っていたけど、上手くいったようだ。


中島君を追いかけていなかったら確実に見つかっていただろうけど。


「東棟に行ったのか……ああ。もうどうすればいいんだろう」


冷静に考えてみれば、「赤い人」がいないなら三階に戻って調べた方がいい。


だけど、小川君の事も気になるし……。


中島君がどこに向かうか予測もつかないから、危険なんだけど。


こんな時、遥なら「安全な方を選ぶに決まってるでしょ」と言うに違いない。


だけど高広ならどうだろう。


「小川が命懸けでやったんだ。俺はあいつの努力を無駄にはしねぇ」