私の足をなでるような、その冷ややかな感覚は、無数の亡者につかまれているかのような錯覚に陥る。
一階から踊り場、踊り場から二階へと移動して、生産棟の二階の廊下から顔を出した私は……その姿を見た。
西棟の奥の方、ちょうど図書室の前の廊下と重なる辺りだろうか。
緑の光で浮かび上がる男子生徒の影。
明らかに中島君とは身長が違うから、あれが武司だという事がわかる。
「どうしよう……体育館には行けないよ」
いつ振り返るかわからない武司がいるこの長い廊下を、足が遅い私が見つからないうちに走り抜けるというのは、少し難しい。
生産棟を横切って、東棟に入るという手もあるけど……「赤い人」がいるかもしれないという危険性を考えると、それも避けたい。
死ぬ覚悟できている……なんて、格好をつけた言葉を言うつもりは毛頭ない。
無理だとわかっていても、今日、カラダを全部見つけて、「カラダ探し」を終わらせてしまいたいと思っているから。
誰も、好きで死にたいとは思ってはいないはずだ。
「だったら……三階」