突然の大咆哮。
過去に何度か聞いた事のあるそれに、私が思うのは、小川君がぬいぐるみを「赤い人」から奪い取ったのだろうという事。
カラダを取り出した後でそれが行われたのか、今から取り出すのかはわからない。
だけど私には成功を祈る事しかできなかった。
人を心配している余裕なんて、今の私にはない。
少し開けたドアから、そっと顔を出してみると……。
廊下には誰もいない!
さっきまでそこにいたのに!
慌てて首を引っ込めて、教室の後ろを見てみると。
そこには、スカートをはいているような黒い人影があったのだ。
「ひっ!」
胸の中で何かが弾けるような感覚が、声を押し出すと同時に、冷たいものを身体中に広がらせる。
急いでドアを開けて、転がるように廊下に出た私は、階段へと這って進んだ。
ヤバいヤバい!
「赤い人」の声と、耳をふさいだせいで、ドアを開ける音が聞こえなかった。
それでも、ギリギリのところで気づく事ができたからよかった。
遥には、反時計回りに調べろって言われたけど……次の教室を調べている最中にまた入ってきそうで、とてもじゃないけどこれ以上は調べる事はできそうにない。