中島君なら……まあ、たぶん殺される事はないだろうけど、そうじゃなければ「赤い人」を呼ばれてしまう。
小川君が勇気を出して、ぬいぐるみからカラダを取り出そうとしているのに、今まさにその最中だとしたら申し訳ない。
私にできる事は、誰にも見つからないようにする事だ。
教室のドアを閉めて、ドアの横。
窓の下に身を隠して、廊下から聞こえる音に集中した。
コツ……。
コツ……。
革靴のような音。
それが階段を下りてきている。
この教室の隣にある階段から聞こえているようだ。
まずいよ……。
下りてすぐの教室なら、入ってくるかもしれない。
目と、脚さえあれば動く操り人形。
音は聞こえないはずだから、見られさえしなければ大丈夫なはずだ。
そうは思っても……足音が一階の廊下に下りたという事がわかった瞬間、呼吸音を抑えようと、ゆっくりとした深呼吸に変わる。
コツ……。
コツ……。
廊下を歩くその音の主が、壁を挟んだ向こう側までやってきた。
遥はこの足音に気づいているのだろうか。